番外編 野良猫2
野良猫とのイタチごっこもなく、毎週釣りと洗車で幸せを満喫し、平日は愛車の輝きに酔いしれる日々が続いていた。
今は6月、梅雨の真っ只中だ。
茶トラと、数年前には仔猫ちゃんで、当時はかなり人懐っこくて『飼っちゃおうかな』と悩ませたクロを見掛ける。
私の気持ちにも余裕があり、野良猫達に『チチッ』と笑顔で口を鳴らせる。
バス停近くの老犬を飼っているオジサンは、縁側で猫を飼っている。
家の外で飼っているのか、野良猫にゴハンをあげているのかは分からないが…
2〜3週間前、帰宅時にそのオジサン宅から何やらか細い声が聞こえるのに気がついた。
ミン
ミン
❓
覗き込むと小さな仔猫が何匹も、とても癒される。
帰宅時の日課となった。
母猫と仔猫たち、とても微笑ましい。
数日が経ち、自宅のベッドで寝ていると微かな声が聞こえてきた。
ミン
ミン
ミン
『あぁ、どっかで産まれたか』くらいにしか思わなかった。
翌日の夜…
ミン
ミン
ミン
気にも止めなかった。
さらに数日が過ぎた頃…
帰宅して着替えていると、窓の外からまた声が。
ミン
ミー
ミー
ミーー
ん❓
そーっと窓から覗くと、3匹の仔猫たち。
茶トラだ。
飛び跳ねて遊んでいる。
その場所はちょうど3軒の家の裏となり、ちょっとしたスペースとなっている。
私はあまり実のつかなブルーベリーや、料理用のローズマリーとバジルを植えている。
3軒のうちの1軒は物置を置いていて、ブロックで底を浮かせているのでその下を寝ぐらにしているようだ。
私は『猫好き』の妻を小声で呼び、久々に妻の少女のような声を聞いて恥ずかしくなった。
彼らは帰宅時の密かな楽しみとなっていた。
さらになんと、父猫はあの茶トラであった。
仔猫たちが遊び回る傍らに、茶トラが穏やかな顔で寝転んでいた。
妻からは『三毛猫がオッパイあげてた』と聞かされ、ファミリーで総勢7匹もいることがわかった。
しきりに『猫ちゃんたち、どうする❓』と聞いてくる妻に、『そーっとしておこう』と提案した。
妻はすでに猫を多頭飼いしている姉に、仔猫を飼わないかとLINEを繰り返している。
休日に洗車をしていると、近くでまた猫の声が聞こえてきた。
頭を回すと、今度はクロっぽい猫。
あの時仔猫だった。